2006年7月23日 (日)

誰が為に鐘は鳴る

 広島市には『広島電鉄』という私鉄があります。
地元の人々には「ヒロデン」という愛称で呼ばれているチンチン電車がソレです。 私はこの「ヒロデン」が走っている姿を見ていると、何となく「都市の背骨」の様に思えるのです(これはある雑誌からの受け売りですが)。単に車やバス、地下鉄では越えられないような何かがチンチン電車にはあると思うのです。現にチンチン電車がある町はどことなく緩やかな様な気がします。過去様々な都市で活躍していたチンチン電車を次々と購入し、行政と組んでモータリゼーション化がもたらしたチンチン電車への逆風を乗り越えていき、最近は「グリーンムーバー」と呼ばれる低床の次世代型の市内電車を導入して新たなる時代をリードしている…と、次々と話題をこの会社は提供し続けています。

Hiroshima02_1

(写真は2003年広島市内で撮影したグリーンムーバーさん)

この「ヒロデン」、都市の人々だけでなく広島港から松山や別府へむけて移動する人々や宮島へ観光に行こうという人にも便りにされています。それだけ広島市内や近隣の街の要所を押さえているワケですが、もちろん「ヒロデン」さんの沿線にはあの世界中で2箇所しかない場所のひとつも押さえています。

 Pict0183_1

そう、世界遺産として登録されている原爆ドーム。大都市には似合わないあまりにも大きな広さの公園と共に整備されたこの場所に降り立ちますと、このドームが無言のまま私たちに人類の負の歴史を物語っている…そんな気がして仕方がありません。この原爆ドームの最寄電停『原爆ドーム前』、実は到着時車内に響くチャイムが他の駅とは違うというのをご存知でしたでしょうか。これには観光で来られている方々を誘導するという意味合いもあります。英語のアナウンスが入るのですが、日本に来られる方々の全てが英語を理解できるという保証はどこにもありません。他の駅とは違ったメロディを流す事で注意を引くという効果も多少あります。しかし、この音色にはもう一つの意味が込められていると私は思うのです。

その理由はこのメロディを発している物体にあります。コレは広島の平和公園にある「平和の鐘」から奏でられる音をモチーフとしたものだそうです。あの式典で鳴り響く鐘の音がこの電停で鳴り響いている。その音色は一体私たちに何を語りかけているのでしょうか。あの閃光が地上に降り注いだ日から三日後、広島電鉄は一部区間ではありましたが市内線を復旧。当時この市内を走っていた車両は一部ではありますが現存しており、今も8月にはこの列車を使ってあの日の体験を語るイベントが開催されています。

 

Pict0185_2

今年もあの夏がやってきます。広島電鉄は毎年この時間、この周辺で走っている列車を近くの電停に臨時停車させ、その時が来るのをじっと待つそうです。政治な信条も国も考えも違うかもしれません。でも一つだけ判っているのはあの日、この場所でたくさんの人が亡くなった事実。もし時間があるのでしたらどうでしょう、今年の8月6日、1分だけで構いません。少しの間だけ、祈ってあげませんか?

|

2006年6月25日 (日)

夜行列車へ乗る前に

 「夜行列車に乗る際、一体何を持ち込めばいいでしょうか?」

…実はこの質問、結構あります。何せ夜行列車は他の「夜行バス」や長時間拘束される国際航空便とは違った部分がかなりあります。それらに適した用意(特に市販されているグッズ)をしていくと、役に立たない場合が多いんです。

 では、夜行列車に必要なものとは一体なんなのか?…コレを解き明かすには夜行列車の特徴を把握するところからスタートしなければいけません。夜行列車は駅に滞在する時間が短い(トイレが使い辛い夜行バスと比べて、客室にトイレが備わっている為に休憩の時間を取らなくてもいい)分だけ、座席に滞在する時間が長くなります。この「座席」を快適な状態にする持ち物があると、ちょっと余裕が生まれてくると思いませんか?

 長距離を移動する交通機関に乗ると、必ず「足」に何らかの影響を及ぼします。そこで、室内では靴を脱いでおくということを私はお勧めしています。その際使用するのが「段ボール」。これを床に敷いておくと、そのまま素足をおくことができます。また、段ボールを敷くことで従来足元から響いてくる振動が幾分解消されます。もちろん段ボールですから、使用後は駅の資源回収用ゴミ箱に捨てる事が出来ます。段ボールが面倒なら新聞紙でも構いませんが、新聞紙の場合だと吸水性に優れすぎているために、時々蒸れた靴下がくっ付いてしまうという場合があります。段ボールの場合だとある程度段ボール自身に重さがあるので、ソレがありません。

 それに段ボールだと、最悪こういう状態になった場合、寝具としても使うことが出来ます。

Pict0029 (昨年のムーンライト九州にて・指定席を奪われて棚に寝る人)

もちろん「全席指定」の列車に指定席券を購入せず乗り込んで、こういうことをするのはルール以前の問題ですので、お止め頂きます様申し上げておきます。…でも座席を占領されてたりすると、残念ながらこういう状況になるんですよねぇ。

 ただ、これだけではいわゆる「エコノミー症候群」と呼ばれる症状を回避する事は正直難しいと思われます。エコノミー症候群は同じ姿勢を取り続けた際に、足の膝等に滞った血液が固まり、その固まりが血栓となって各臓器届いてしまい、結果身体に悪影響を及ぼす病気です。この病気を回避する為にも車内にいる際は歩けるようにして頂きたい。そこであったら便利なのが「使い捨てのスリッパ」。これがあると先ほどの段ボールの床からトイレなどに移動する際、容易に移動することが出来ます。もちろん無ければ無いでいいですが、あると結構便利だったりします。もちろん「歩く」だけでなく、保温効果もありますので、冬場に乗る際はあると足元が暖かくなってかなり有効かと思われます。

 もちろんこれだけではなく、「お茶」「お水」等のソフトドリンク類、「カロリーメイト」等のポケットサイズの食べ物も事前に購入しておく事をお勧めします。昔は車内販売があったのですが、今はほとんどありません。駅のホームに売店や自動販売機が無いところもたくさんあります。これらの商品をちょっとだけ手元に置いておくと、不意の運行抑止などで拘束されてもある程度は安心して過ごせます。またお酒などを持ち込まれる方が時々いらっしゃいますが、この場合夜中は楽8しいかもしれませんが朝方になると一気に邪魔者へと変化しますので、ほろ酔い程度で終わる量を持ち込まれるのをお勧めしておきます。

…個人的にはタオルが1本(特にコンビニ等で発売している『長いタオル』)あると夜半の汗対策など色々と使えますし、大き目のビニール袋があればゴミも回収できて気持ちよく列車を降りることができますから、持っていたほうがいいのではないかと思うのですが、そこは個人の判断でお願いしたいと思います。それにこういうのが手間だ!という方は寝台席を利用される事をお勧めします。そこには一日分の寝具(浴衣ですが)や布団などが用意されていますし、列車によっては車掌さんから「お泊りセット」を購入する事が出来ます。でもこの場合、私はちょっと味気ないなぁと思ってしまいますので、できれば皆さんで創意工夫をしていただけたらいいと思います。

参考として毎年夏に私が夜行列車に乗るときの荷物(3泊4日分・一泊車中泊含む)を記載しておきますのでご参考にどうぞ(黒太字は旅のセット、赤太字は夜行用)。

半袖Tシャツ・パンツ・タオル:日数分(4セット、うちタオル1本は現地調達)、

長袖シャツ:1枚、時刻表(大判):1冊、

メモ帳代わりのシステム手帳:1冊(ここに必ずきっぷを入れておく)、

携帯電話・デジカメの充電器、:各1個、水(500CCサイズ):1本

ソフトドリンク類:2リットルサイズ2本(必ず水とお茶)

アルコール類:ビールなら500cc4本、清酒なら500cc1本。

乾き物類:ポテトチップス系統を2袋ほど(地域性があるもの)。

 

…それにしても、参考になるんでしょうかコレ。

|

2006年6月23日 (金)

夜行列車のススメ

 前回は大変見苦しい場面をお見せしてしまい、申し訳ございませんでした。今回からは心を入れ替えて(?)コンシェルジュらしいところを見せていけたらと思っております。

 さて、そろそろ季節は夏。梅雨空の合間に見える青空、まるで我々を旅へと誘うかのような透き通った空間に心を奪われそうになっている方々も多いかと思われます。旅と言えば飛行機や新幹線で行楽地!…なんていいかもしれません。仲間が集まってワイワイとキャンピングカーを借りてキャンプなんていうのもいいかもしれません。しかし、今年の夏はあえて「日常の中の非日常」を味わうという旅は如何でしょうか。

 …「鉄道で非日常なんてあるのか?」なんて声も聞こえてきそうですが、実際に存在しています。夜の帳が下りた頃、普段利用している駅のホームからあまり聞きなれていない地名が聞こえてきたことがありませんか?時刻表を見ていると日付が変わる頃、ひっそりと運行を始める列車。そう、「夜行列車」です。私が幼少の頃、「ブルートレイン」という寝台専用夜行列車が一大ブームになった時があります。あの時から早幾年、時代は交通機関に対して高速化や個性を求めるようになり、その要求に答えられなくなった「ブルートレイン」はダイヤ改定の声を聞く度、その歩みを止めてまいりました。

 しかし、まだまだ「夜行列車」は可能性を秘めていると私は考えています。現に時間帯によってはまだまだ選ばれる交通機関に成り得ると思っています。また従来の価値観とは違った視点で見つめ直すと、これほど興味深いものはありません。

Pict0007 Pict0039

Pict0062 Pict0105

 乗るとそこはいつもの日常とは違う世界。見慣れた車窓が徐々に旅景色へと変貌を遂げます。何気なく通過していく駅も、夜明けも、列車の揺れも、レールの繋ぎ目の音も、心にズシリと響いてきます。…ああ、文章書いてたら旅出たくなった。

さて、今回からはちょっとした短期連載という形ではありますが、夜行列車に必要なもの、あれば便利なものを私の経験を元に書き連ねていこうと考えております。夜行列車のみならず、サイコロの出た目に沿って夜行バスに乗るあの方も、やられる前に是非ご一読しておく事をお勧めいたします。

お時間がございましたら、御笑覧くださいませ。

|