2008年5月10日 (土)

鉄の本ブーム

 いつもレールウェイコンシェルジュをご覧戴きまして誠にありがとうございます。まず最初にお断りを申し上げます。従来は「皆様に鉄道に興味を持って頂こう」という趣旨の元多種多様な項目で皆様にお楽しみ頂きたく色々と行っておりますが、今回はかなり辛口な内容となっております。

その為、今回この項目を読まれた方の中には不快な思いを感じる方がおられるかもしれません。嫌な後味だけを感じてしまう方が多数だと思います。今回あえて二段階に項目を分けて記載致しました。この続きを読まれる際は「不快になること」をご承知の上、続きをお読みいただければ幸いです。

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2007年1月13日 (土)

時を書き写す・実践編

 市販の時刻表からダイヤを読み取って書き写す。…文章に直すとたった21文字の行動なのに、何故か問題が沢山ありました。まずは書き写す路線をどの路線にするのかという事。単線区間だとものすごく楽になりますが、それだとあまりにアッサリと終わってしまいます。また複雑すぎるのも考え物です。ダイヤグラムというのは単純な構造ゆえ簡単に書き記す事が出来ますが、パッと見ただけで理解されなければ役に立ちません。複雑さの原因は首都圏や関西地域などに存在している『複々線』という路線形体にあります。

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(JR西日本東海道線の複々線)

これらの路線は高速で走行する種別の車両と各駅に停車する車両を別の線路に用意し、運行系統を分けることを目的として敷設されています。確かにこれだとダイヤの設定も楽になりますが、これらを一つの図面に書き込んでいくと一見ではなかなか理解しにくい状態となります。また関西地域の鉄道会社はこの複々線をラッシュ時など有効に利用している場合があります。京阪電車の場合、本来各駅停車用として敷設されている路線に通過する列車を走行させ、他の優等種別の列車を次々と通過させています。これは大胆且つ画期的な方法として一部の方々の間では有名なお話となっていまして、そのためにダイヤグラムはますます複雑になっています。

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(私を悩ませた複々線の信号所・写真は吹田信号所)

違う面で有名なのが京都駅から関西空港・紀勢本線へと走行する系統の列車です。利用客に便宜を計る為、かなり複雑な運行経路を示している場合があるのです。例えば関西空港へ向かう『はるか』という特急、この列車の運行経路を文章で説明しますと

『京都駅~嵯峨野線(山陰本線)・貨物線~向日町駅~JR京都線(東海道本線)~吹田信号所~貨物線~新大阪駅』(青字の部分だけ本来の複々線・これは関西空港行きの場合だけで、京都行きの場合新大阪駅からそのまま複々線に乗り入れる。)

…ね、ややこしいでしょ?このあと『はるか』は梅田貨物線と大阪環状線、関西本線を通過してようやく関西空港へと繋がる阪和線へと走行していきます。これらの列車も考慮してダイヤグラムを書き込みますと、そのダイヤグラムを判読する行為そのものが『神の領域』に入り込む可能性があります。私はちょっとおかしいところもありますが、どこにでもいるようなタダの味気ない人間です。そこまで高望みは致しません。でも、色々な列車が走っているところのほうが見栄えもいいですし、書いていてちょっと面白いかも…。そこで思いついたのが…。

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(交通出版社発行・JR時刻表2007年1月号より)

JR九州鹿児島本線・博多~鳥栖間。この区間は現在の日本の在来線の中で最も高頻度の特急列車が走行している区間であり、車両も電車・気動車・客車と多種多様な状態。これはく私に『ダイヤグラムを書き起こすのだ』と命令しているかの区間であります。それでは早速ダイヤを書いてまいりましょう。現在パソコンでは時刻表の数字を元にダイヤグラムを製作してくれる『WinDIA』なるフリーソフトが配布されていますが、今回はあえて

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方眼紙、つまり手書きで再現していくことにします。1ミリの隙間を縦軸は距離、横軸を時間と設定します。1ミリで100メートル、1ミリで1分にしたところA4サイズの紙では足りないという事態に。急遽紙を継ぎ足し、書き記す際のことも考えコンビニでコピー。B4サイズとなった方眼紙を一気に貼り付けていきます。

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…長いなぁ。24時間分になったのでほぼ2メートル分の長さとなりました。あとはここに記載していくだけです。…そう、ここまでは楽しかった。夢の様な世界、私が中学生の頃体験していたバブル経済を思い出すかのような順風満帆の世界がこの時広がっていました。しかしその世界は即座に打ち砕かれることとなります。

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書き始めたのは1月の8日、世間では成人の日として大人の世界へ一歩踏み出した若者を祝う日です。その祝う席で酩酊した少年が起こした事件を『未成年だから』という理由で「19歳の少年」と伝えるテレビの報道はどうなんだろう?…なんて思いながら赤いペンを紙に走らせます。ちなみに赤いペンは熊本方面へ向かう『リレーつばめ』・『有明』号を示しています。そう、この頃はまだ『大変だけど頑張るぞ!』という思いがありました。

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1月9日、順調に見えたラインの記載が徐々にヤバい状態になってきました。よく考えれば『リレーつばめ』だけで片道31本、これに『有明』が15本。単純に往復したとして92本の線を書き連ねなければいけないワケです。好きで始めた行動なのに何故か思い浮かべるのは『行き当たりバッタリ』で進めてしまったという後悔の念。それに追随するかのように過去の過ちが脳内に溢れ出します。…ああ、あの時きちんと告白しておけばよかったとか、あの会社に入社しておけばこんなことにはならなかったとか。

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1月10日、作業の進展を加速させた途端に間違って記入。ああなんて事をしたんだ、とまた自分を責める始末。しかし責めていても始まりません。まだまだこのダイヤグラムに書き込まなければいけない列車は沢山あります。長崎本線へと向かう『かもめ』に佐世保へと向かう『みどり』、森の家へと向かう『ハウステンボス』、久大本線経由の『ゆふいんの森』『ゆふ』『ゆふDX』、そして忘れてはならない夜行列車の『あかつき・なは』と『はやぶさ』…。

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煌々と照らされる明かりの中、私は何時の間にか眠っていたようです。『思わず手元にカメラがあったので撮影してみた』と兄に言われ、画像を確認。その時苦悶に満ちた表情からは一体夢の中で何があったのだろうかと思えるほど。

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そして1月11日。ここで大いなる決断を私はすることにしました。『今回は普通列車の記載を取りやめて優等列車のみの記載にする』…。事実上のドクターストップです。

やられました。JR九州にコテンパンにやられてしまいました。

特急王国と言われて久しいあの鹿児島本線に。K-1に例えるならば『曙』、紅白歌合戦に例えれば『DJ OZMA』。思えば無謀な戦いだったのかもしれません。しかし、無謀な戦いとはいえまだ終わらすわけにはいきません。『例え倒れる時でも、必ず前のめりに。』勇者特急隊もそう語っています。そして深夜23時24分…

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九州旅客鉄道株式会社鹿児島本線・博多~鳥栖間優等列車用ダイヤグラム、堂々完成!

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…長かった、本当に長かった。思いつきが元で始めたこの行為、誰からも褒められるわけでもなく、ただ純粋に書き連ねた行為が今ひとつの形としてこの世の中に現れました。形にして気づいたのですが、この一本のラインには必ず人が携わっています。乗客の皆様だけでなく、運転手さん、車掌さん、客室乗務員さん、そしてお客様…。そう、このラインは人生に関わる大きなラインなのだということ。鉄道会社のダイヤ担当者の方々はその思いを乗せてこのラインを引いているのかと思うと何故だか急に胸が熱くなってきました。

…人の英知が結集されたこのダイヤグラム、私は彼らの思いを感じつつ今年も『鐵の道』に精進してまいります。

 

 

(オマケ)

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あのままだとジャマなので、とりあえず丸めてみました。なんだか卒業証書みたい。

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時を書き写す

ご案内:2007年1月26日19時38分に「時を書き写す実践編」へのリンク、ウィキペディアへのリンクを追加しました。

   鉄っちゃんの『バイブル』と言えばもちろん時刻表。

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鉄道の情報のみならず、国内外の航空にバス、フェリーの時刻、そしてホテルやレンタカー会社などの電話番号に舞台芸術のチケット情報等々様々な情報がぎっしりと詰まっている情報の玉手箱。情報量の多さと反比例するかのような1050円(税込)という低価格ぶりと適度な厚さによって急場の枕代わり…と、まぁ色々な使い方があります。私なんかはこの時刻表一冊あれば2時間程度は遊んでいられます。一人ぼっち、し放題です!おーい、誰か助けてくれー。

 しかし最近伝え聞いた情報によりますと、時刻表を読めないという人が増えてきているそうです。確かに現在は携帯電話をピピピッといじって乗換え案内を導き出しますから、それなりに読む機会というのが無くなってきたのかも知れません。時代の流れと言ってしまえばそれまでなのですが、ちょっとそれは寂しすぎます。そこで今回は時刻表を取り上げます。

 市販されていたり、ダイヤ改正(会社によっては改正ではなく改定や修正など色々な言葉で表現しています)する度に配布される路線を限定した時刻表、そして駅構内などに用意されている到着時刻が記載されているボード、これらは本来業務用として使われているものを判りやすく標識化したものだというのは意外と知られていません。

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(左:大阪駅で配布されていた時刻表、右:南海電鉄住吉大社駅構内の時刻表)

その業務用のダイヤ、本来の名前は『ダイヤグラム』と言います。その時間にどの列車がどの位置を走行しているのかが一目瞭然、とっても明快に判るものになっています。(ウィキペディアのダイヤグラム説明はこちら)。しかしプロでも鉄ちゃんでもない人間がいきなり渡されて、どこにどの電車が走っている?と聞かれたってサッパリわからないのがオチです。ちょっと解説していきましょう。

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ダイヤグラムは縦軸で路線全体の距離と各駅間の距離、横軸で時間の経過を表しています。その間にラインを書き入れる事によって該当する列車がその時刻にどの場所を走行しているかを示しています。鉄道会社や列車の運行本数、路線の駅数によって間隔はバラバラになっていますが、どの鉄道会社も基本的な構造は同じです。それでは実例を挙げて詳しく説明してまいります。

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この図面では2時間に3本の列車が走行しています(えらいローカル線やなぁ…)。そのうち②の列車は各駅の間が水平になっています。この状態を『停車』と表します。また①と③は全ての駅を通過している設定ではありますが、同じ距離でありながら走破する時間が違います。これはそのダイヤで走行している列車の性能や路線の特性、単線区間での行き違いなどを考慮してのことです。ちなみにこの状態のことをプロは『(スジを)立てる』『(スジを)寝かす』と表現しています。④の駅間は①と②の列車が交差していますが、こういう表記は路線が複線でなければ出来ません。単線の場合だと正面衝突を引き起こしてしまいます。

…このようなダイヤグラム、作り出すのは結構大変な作業になるそうです。今回、このネタを調べている最中にふと思いました。…私の様なアンポンタンな人間はダイヤ制作者の方々の苦労をまったく理解していないのではないか。その苦労を知らず頭ごなしにアレだコレだと言ってはいないだろうか…と。それならば現場の人たちの苦労を理解する為に、一度ダイヤグラムを書き起こしてみよう。書き起こす事によって彼らの苦労を分かち合えるのではないだろうか。

…さぁ、いよいよ本題に突入です。(実践編はこちらをクリック)

Diadoor (思えばこの時が一番楽しかった)

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