2007年9月21日 (金)

【駄文】南海電車の事故でちょっとだけ考えた

 南海電鉄の萩原天神駅で赤ちゃんが乗ったベビーカーが扉に挟まったまま走行するという事故が発生しました(詳しい事は日刊スポーツさんの記事読売新聞さんの記事中日新聞さんの記事をお読み下さい)。当該の駅に駅員が一人しかいなかったとか、車掌があまり確認していなかったとか、南海電車では過去に同じような事例があったとか雨後の筍のように問題が噴出しておりますが、これらの事故の背景には

プロの意識の無さ

が見え隠れしているような気がします。このところ鉄道会社では人件費の圧縮を目的とした『契約社員』の採用が多く見受けられます。例えば阪急電鉄さん。

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阪急電鉄さんの全ての駅は『阪急レールウェイサービス』さんという子会社が管理しています。この会社は阪急電車・能勢電鉄の駅の業務だけでなく、ココ最近は阪急電車の車掌業務を受託するところまで進出しています。この車掌業務までがいわゆる『契約社員』の範疇で、正式な阪急電鉄の正社員になるには電車の運転免許を所持しなければなることが出来ないという規則まであるようです(もちろん『阪急レールウェイサービス』さんの正社員になるということも可能です。しかしながら各求人サイトの広告を見てもそういう説明をしていないような感じがするのは気のせいでしょうか)。

一時期『運転手が車掌に運転を体験させていた』という本来安全を守るべき仕事である運転手が一番やってはいけないという規則違反が発生した事態がありましたが、この様な事態が発生してしまうのも背景には『正社員にならなければいけない=運転免許を持たなければいけない』という焦りがあるからではないかと思うのです。

 このような状態が続くとなると、現場は本当に大変だと思います。人がいない上に雇用状態を安定化するには次々と試験を突破していかねばならない。その状況下で運行と安全を守る…。それってちょっとムリだと思いませんか?いや、鉄道マンという職業はそれが当たり前なのかもしれません。しかし、接客と運輸という相反する業務を学ばせる事は相乗効果を生む場面もありますが、逆効果になりうることもあると思うのです。

無理やり例えるとするならば、『昨日までフロントで接客していたホテルの従業員に、ある日突然調理場へ移動させられいきなり河豚を捌かせる』ようなものです。『将来の運転手候補』『正社員への道』という甘い言葉をちらつかせて人を集めるのもどうかと思いますし、今後このような状態が続いてしまうと駅での業務自体が軽く捕らえられてしまう(=駅のサービスレベルが低下してしまう)ことも考えられます。接客は接客、運輸は運輸という形で究めて行くべきこともあるのではないか…と思っております。

 

…所詮単なる鉄道オタクの戯言でございます。アッサリと水に流していただければ幸いです。

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2007年3月18日 (日)

ふたつの宇治駅

(2007年3月19日午前0時25分、タイトルを変更しました)

 意外と知られていないことですが、お茶の名産地として有名な『宇治』、宇治金時の宇治がある京都府宇治市には二つの『宇治駅』があります。

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(左:宇治駅の位置を知らせる地図、右:宇治川)

宇治川という川を挟んで退治しているJRと京阪の駅、昨今のニュースではJR宇治駅のタクシー乗り場に『小型』『中型』という文字が道路上に書かれていたというニュースがありましたので、知名度という視野から見るとJRの方に軍配があるように思えます。今回はこの2つの『宇治駅』をちょっと見てみましょう。

 先ずはニュースにも紹介されましたJR宇治駅のタクシー乗り場から。

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(消しているとはいえしっかり残っている)

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(中型タクシー乗り場と書かれた場所はタクシー降り場)

…確かにプロが書いたんじゃないか?と言わんばかりの書きッぷり。これはこれですごいことです。今回本当はこのタクシー乗り場だけを取材する予定だったのですが、実際に取材をしますとそれ以上に『宇治駅』の姿に興味をそそられてしまいました。先ず最初にJR宇治駅の周囲をご覧下さい。

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…宇治市というのは閑静な住宅街だというイメージがあったのですが、駅舎から駅前広場に降り立った際目に写るのはアミューズメントパークみたいな装飾の数々。ある意味『パラダイス』一歩手前です。こんな装飾が沢山ある宇治駅周辺ですが、駅舎自体は結構地味な構造になっています。

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周囲が観光色豊かな状態になろうとしているのに対して、駅舎自体は『宇治らしさ』をほのかに漂わせる堅実的なデザインとなっています。この外観と同様に駅舎の中も実に堅実です。

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…所々に緑茶の「緑」をデザインとしてあしらっただけで、色覚的に『ああ、宇治だねぇ』と想像できるものに仕上げています。よく言えば堅実的、違った視線から見ると面白みにかける駅舎だと思います。一方の京阪と言えばどういう駅舎かと申しますと…

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…和の要素が一切ありません。コンクリートで構成されたちょっとモダンな洋風建築となっています。『なんだ、これじゃあ面白くも何も無いじゃないか!』というのはまだ早すぎます。京阪宇治駅はこれだけではありません。先ほどの地図を今一度ご覧下さい。

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京阪宇治駅の真横にはJRの奈良線が走っているのが判るかと思われます。この路線の配置が京阪宇治駅の駅舎を新築する際一番の問題となった箇所だったと思われます。しかしこの配置が京阪宇治駅の最大の特徴として生かされることとなったのです。

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改築前はこの洋風建築だった部分に駅の機能を全て設置していました。その為乗車する際は一旦JRの路線を潜って移動、改札を通ってもまだ乗車するには距離がありました。過去一度だけ利用させていただいたことがあったのですが、その時はどうしてこういう構造にしたのかちょっとだけ納得できない構造でした。

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しかし、新しく建てられた京阪宇治駅の駅舎の場合、あえて役割を分割しました。プラットホームと改札口、そしてエントランスの部分を明確に分けたのです。従来の駅業務を行っていた場所にショッピングスペースを設置。ホームの場所を後退させ、空いたスペースに新たなる駅の業務スペースを設置しました。その結果利用する人は構造上長い距離を歩かなければならないことに対して苦痛を感じることなく歩くことができるようになりました。

…ま、これだけならどこにでもある話。見せ場はここから。この駅業務を行う場所というのが先ほどのデザインとは打って変わった施設となっております。それがコチラ!

 

 

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…どうでしょうか、この円を多用したデザインの数々。コンクリート製の味気ない駅舎は多々ありますが、コンクリートの風合いを見事に生かしきったデザインはあまり見たことがありません。この駅を利用する際、駅の構造上どうしても閉塞感がある直線的なデザインが連続するようになります。単調になって退屈感を増してしまうところに出てくる丸の姿に思わず目がひきつけられる事でしょう。建築のデザインなどにこだわる人々には『日本人は建築に円を使いこなせない』等と仰る方もおられるかと思われます。しかし、それはあくまでその建築物を単体で見た際に思ったことであり、駅舎のトータルバランスとして考えるとこの円形が連続する駅舎はそんなに悪くないと思います。

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この京阪宇治駅、南海電車の『ラピート』をデザインした建築家が設計をした…と言うとなぜか納得する人が多いというのは何故なんでしょうねぇ。

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2007年2月16日 (金)

ビフォーアフター

 盛者必衰の理(ことわり)を表すというのは昔からの慣わしみたいなものでして、いいものが発明されるとなると、今までのモノをアッサリと斬り捨ててしまう。世知辛いといえば世知辛いものでございます。鉄道の世界でも革新的な技術が作り出されると一瞬のうちに広まっていきます。『昔はよかった』と呟いてみても後の祭り。それでも立ち止まっていてはいけません。今回はこの『レールウェイコンシェルジュ』で取り上げた事項の中で変わっていったもの、評判があったものにスポットを当ててみます。…ま、簡単にいえば総集編です。本当なら新しい記事を予定していたのですが、それが予想以上に時間が掛かっちゃったため…でございます。なので今回はお気楽にご覧いただければ幸いです。

  

まずは阪急梅田駅の『ビフォーアフター』。

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関西を代表するターミナルというだけあって、過去幾度と無く登場しているこの駅。検索エンジンからやってくる人々の大半が『パタパタを愛でる』の中で取り上げた『ラガールビジョン』だったりします。別の件で取材する為に阪急梅田駅を利用したところ神戸線と宝塚線だけ…

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…3色LEDに変わっておりました。ウィキペディアによると『ラガールビジョンが劣化した為に変更した』とのこと。確かに現在使用されている3色LEDに比べると若干見にくい部分はあるかもしれません。でもこれで<普通の>パタパタになってしまったなぁ…という感が否めないのは私だけでしょうか。

 

次に電車の車内の『ビフォーアフター』。

2005年に難燃性の基準が改正され、従来の樹脂製カバーをつけることができなくなったというのは以前『天井コレクション』の中でも説明させて頂きました。その結果JR西日本の321系ではグラスファイバーを用いたものを使用したり、阪急の9300系・9000系のように間接照明にして対応したりしています。

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(阪急9300系車内の天井。間接照明が室内を柔らかく照らしている)

その一方、蛍光灯カバーを止めてしまった会社も存在しています。その代表格が近鉄電車のシリーズ21。元々2000年から増備していた車両には他の天井の部品と強調するような蛍光灯カバーが設置されていました。この蛍光灯カバーも前出の改正と共に新規製造された車両からは撤廃されてしまいました…が、そこはあのJR九州の車両を作っている近鉄グループの近畿車輛。

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(左:蛍光灯カバーの無いシリーズ21車内、右:JR九州813系車内)

…どうでしょうか。813系で形にしたデザインを上手に発展させているではありませんか。照明の蛍光灯を機器の都合で一つ一つ点在させて設置するのではなく、連続したデザインを施して対応しています。蛍光灯の特徴的な形状を見事に生かしきったデザインとなっています。ウィキペディアにて『蛍光灯カバーを設置していない』という記載があった際、ちょっと不吉な感じがしましたが、これはこれで見事!というデザインに仕上がっています。

 

最後に『つながり』に関した『ビフォーアフター』。

当『レールウェイコンシェルジュ』はブログという形式で発表しております。ブログである以上、「コメント」や「トラックバック」等の機能を生かした双方向性を保たないといけない…とは思うのですが、諸般の事情によりその機能は設置しておりません。またご意見ご感想をお届け頂く際は『mixi経由で』という特殊なやり方で行っておりました。先日あるmixiユーザー様から

「mixiユーザーでなければ(レールウェイコンシェルジュに)意見することが出来ないのか」

というご意見を頂戴いたしました。大変貴重なご意見を頂いたことに感謝いたしますと共に、mixiユーザーではない方々にご不便をお掛けしておりましたことを深くお詫び申し上げます。その事を鑑みまして、この度新たなる連絡先としてYahoo!のメールシステムを利用することに致しました。アドレスは

Mailadd です。画像で処理しておりますのでお手数ですが書き起こして頂きますようお願い申し上げます(プロフィールページには画像処理していないアドレスが記載されております。そちらも説明に沿ってお送りいただければ幸いです)。

・・・で、肝心なのはここから。mixiユーザーの方から先週発表しました『キミとボクをつばくもの』に関して大変興味深いメッセージを頂戴いたしました。この回で私は『自動連結器』と『密着自動連結器』の違いについてあまり説明をしておりませんでした。これは「デイリーポータルZ」内のコンテンツ『コネタ道場』にてライターの石原様より「余分なところを削って簡潔に読ませるテクニックも必要」というアドバイスを元に書き記したために起こってしまったものでございます。これも全て私の不徳の致すところでございます。今回頂いたメッセージを元と致しまして、改めて『自動連結器』と『密着自動連結器』の違いについてご説明を申し上げます。

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 『自動連結器』には「遊び」があるために、発車時に衝撃を受ける…とご説明いたしました。この「遊び」、何も不都合な点ばかりではなかったそうです。この「遊び」があるため出発時の機関車に負担が掛からなくなるんだそうです。確かに止まっているものを一斉に動かそうとするのは大変です。この「遊び」があることで、徐々に機関車に負荷が掛かり、機関車への負担が少なくなる…そうです。確かに私みたいな体型の人間が急に動いた時、ヒザや関節に大変な負担がかかります。ソレと同じこと…でしょうか。

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一方の『密着自動連結器』、現在では客車などに多く使われているこの連結器、性能が向上した機関車が牽引することを前提として設置されたそうです。

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(交通科学博物館に保存されている20系客車の食堂車、連結器が密着自連)

交通科学博物館などに展示されている蒸気機関車や古い客車には普通の『自動連結器』が取り付けられています。一方で長大編成を組んでいた20系などのブルートレインには『密着自動連結器』が取り付けられています。一気に動かすことができるから設置されるようになった…これぞ技術の進歩というものでしょうか。

Kimibokuafter03 (一気に動かすイメージ)

技術の進歩があったからこそ、『密着自動連結器』というものが採用されるようになったんですね。いやはや改めて鉄道の奥の深さを知った次第です。

…さて、皆様に鼻で笑っていただけるようなコンテンツを目指して右往左往しております『レールウェイコンシェルジュ』、皆様のご期待に添えますようこれからも誠心誠意精進してまいります。今後とも宜しくお願い申し上げます。

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2006年9月18日 (月)

台風

台風13号が日本にやってきました。

今回の台風は九州各地で多大なる被害をもたらしている様です。特に宮崎県延岡市には台風が遠因となった竜巻が発生し、甚大なる被害が伝えられています。延岡市を走っている日豊本線では、特急車両が風に煽られて脱線してしまうという事故が発生しています。

事故に遭遇してしまった乗客の皆様、そして今回の竜巻・台風によって被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。

当「レールウェイコンシェルジュ」では、このブログを管理している私自身がそれほど頭のいい人間ではございませんので、検証するといったパフォーマンスは行いません。既に国土交通省の事故究明スタッフの方々が到着されておられるようなので、そちらの公式発表を待ちたい…と考えております。予めご了承頂ければ幸いです。

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2006年6月14日 (水)

都電荒川線の事故に関して

 いつも「レールウェイコンシェルジュ」を御覧頂きまして、誠にありがとうございます。

昨日(6月13日)都電荒川線梶原・栄町間にて「正面衝突」という決して起してはならない事故が発生いたしました。「鉄道を愛する人間」の一人として、今回の事故に遭遇してしまった乗客の皆様にお見舞いを申し上げます。

そして、今回の「正面衝突」という鉄道事業者として単純且つ最も愚かな事故を起こした東京都交通局に対し、「鉄道運輸のプロ」としてきちんとした原因の究明と再発防止策の検証と徹底をお願いしたいと思います。

 

レールウェイコンシェルジュ あすやん。

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