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2012年5月 1日 (火)

ちょっと真面目な話

 皆さん、お元気ですか。私は貴方に届く気がするからここで歌って……じゃない。すっかり更新する事を忘れておりました。ごめんなさい。

さて、そろそろ鉄道ネタでもしようかいな……と思っていたところに、ツアーバスが高速道路で事故を起こしたという報道が。死傷者が多数発生したということもあって、(これといってネタのない)ワイドショーはこぞってこの事件を取り上げておりました。そこで思う事をツイッターでつぶやいていたところ、

「コレ、レルコンにアップしてみたら?」

と言われたので、調子に乗ってブログにアップしてみます。ええ、もう怒られる事は前提で書きなぐってみますので、皆さんもソレを前提にお読み頂ければ幸いです。

一応私は「国内」旅行業務取扱管理士という資格を持っています。この資格を持っていると旅行代理店を作ることができるそうです。なので旅行業に関してはなんとなく話すことができます。もちろん資格としては最低ランクの資格で、実際に勤務したことがありませんのでなんとなく(と書いて適当と読む)ですけど(自嘲)。

意外と知られていないのですが、もともと「旅行」という「商品」そのものには料金基準がありません。これは多分ネットしている人はお分かりだと思いますが、「ホテルの料金が正規で泊るよりネットで予約した方が安くなる」っていう実態があります。

アレは「なんで正規で泊ると高いのか」と言いますと、寸前までホテル側としては「こいつ泊るのかな?どうなのかな?」ってかなりドギマギしてるんですよ。泊まることを前提にしてホテル側は色々と準備をします。いいところのホテルとかになると常連さんに対しては色々なサービスを盛り込んだりします。盛り込んだところでキャンセルされたら、その部屋を整備した費用はムダになります。コレは本当にイタいんですよ。

ホテル側としては一応「キャンセル料」という予防線を張っていますが、なかなかソレを請求するというのも……っていうのが実情なんですね。急にキャンセルっていうのは相当よんどころない事情があるって事なので、そこに請求なんてあまり気が引けるワケです。だから泣き寝入りしないためにも、実際にキャンセルしにくい人を優先的に入れたいとホテル側だって思うわけです。

あと、実店舗の旅行代理店を通して予約したりするお客さんもいます。ソレをするとホテル側は旅行代理店にお金をマージンとして幾らか払わないといけないケースがあります(ちなみに旅行代理店も「端末使用料」として幾許かのお金を利用者から徴収しているところもあります)。これが意外と痛いんですね。正規の料金に関してはそのマージン代も何となく組み込まれているって思ってください。

その一方で、ネットで予約すると思いっきり安くできるのはマージン費とか人件費云々もそうなのですが、ホテル側としては「この予約した客は確実に止まる(=収益が上がる)客」と確認できるんです。

「値段にひかれてネットから予約する客」っていうのは、もう宿泊することを前提としているわけですよ。明らかに利益を得られるお客さんなんです。でも「値段にひかれて」泊まる人っていうのは正規の値段だと飛びつかないから、ちょっとだけ「儲け」のレベルを下げるんです。その儲けを下げた値段が「ネット」で提示された金額なんですね。

もちろんホテルのサイトから予約してくれたら旅行代理店に支払うマージンも払わなくて済みますね。そのマージン代もカットして、尚且つ儲けのレベルをちょっとだけ下げた料金を提示できるっていう寸法です。

実際に今、大阪の某高級ホテルに素泊まりで泊る場合、最安値はネットの2.5万円(ただしこのプランは滞在時間が19時から9時までと限定されています)。通常の料金は4.6万円となってますので、この時点でほぼ半分のお値段ですな。ちなみにネットで通常予約と同じ滞在時間を選択すると2.9万円。もうここでも一万円以上の差が。

……といいますか、こんなに幅があるとちょっと値段に信用が無くなるんですけど。

閑話休題。

ホテルの話が長くなりましたが、今回のお題は「ツアーバス」。この「ホテル」の部分を「バス会社」、利用者を我々ではなく「旅行代理店」と変えてみてください。バスを借りる場合、一応正規の料金表はあるものの、バス会社は直接当ってくれた人にはそれなりのお安い料金を提供してくれます。

今回のツアーバスは旅行代理店が企画した疑似路線夜行バスです。この場合、最も料金を安く設定するには「自分たちで言う事の聞くバス会社で運営する」っていう方法を取ります。大手のツアーバス旅行代理店の中には子会社のバス会社を持ち、赤字に行くか行かないかのトントンなところで値段設定をすれば、ある程度運営は可能なんですよね。

んでもって、旅行っていうのはピークの時に思いっきり儲けるシステムになってます。ホテルや観光地なんかではこういう時

「人がたくさん来る」

「この値段だと部屋は即満室になるよん」

「いくら値段を釣り上げてもいいんじゃね?」

「よーし、特別料金取ってトップ料金だ!」

……とホテルならそう考えます。だけどツアーバスの場合は違います。あくまで聞いた話ですが、だいたいこんな流れになっているそうです。

「予約がたくさん来る」

「儲けるぞ!バス増便するんだ!」

「バスねえっす」

「どっかから安く借りろ」

「(棒読み)バス会社さん、これからもいっぱい借りるから安く貸してね(ニコッ)」

(提示された料金は格安・バス会社涙目)

契約した段階でもうそれは「商売として成立」しちゃってるんです。こういうやり方をしたら、そりゃ旅行代理店も「圧力をかけたわけではない」なんていう理屈が通ります。私からすればそんな格安料金で契約するバス会社も問題じゃないかと思うんですね。

だけど、私はミヤネさんや小倉さんが言っているような「勤務体制がうんぬん」とか「下請けをいじめすぎだ」とかいう論理にはしたくないんです。

バス会社だって一応営利企業ですから、儲からないと意味ないんですよ。ガス代は上がる、人件費だって上がる、バスを安く買ったって保守にお金がかかる、なのに買われる値段は据え置き。そりゃどっか削るしかないでしょう。そうなると真っ先に削られるのはバスの運転手の人件費だと思うんですよね。

しかも今回の場合は国土交通省がヘンな指針を出しちゃってる。そのルールの中で運営している以上文句は言えないんですよ。全てはルールを守ってやってるんですからねぇ。

もちろんツアー会社だって営利企業です。儲からないと意味無いんです。薄利多売すればいいという論理もアリだと思いますが、そういう料金で募集しているっていうことはそういうバスツアーなんだっていうことをコレを機会にきちんと認識してほしいんです。

今回の事故はツアーバスであっても路線高速バスであっても発生しうる事故であったと私は考えています。一部報道関係者の中でストーリーの組み立てがしやすく、視聴率が取りやすい素材だった上に、連休中に発生した事故だったから今回これだけ大きく取り上げられただけであって、事故はいつ何時発生するかはわかりません。それならば、リスクを避けるための選択肢を多く持ち合せておいた方が無難だと思うのです。

「安い」には「安い」だけの理由があります。その一方で「高い」には「高い」なりの理由もあります。ホテルだって一泊するのにあれだけ幅があるのは、それだけサービスを提供しているからなんですよね。だから、安いツアーの裏側には何かあるってことだけは、軽く認識しておいてもいいんじゃないかと思うんです。

実際に私は未だに「ツアーバス」を利用した事がありません。単純に移動する場所へちょうどいい時間に運行しているバスが無いということもあるのですが、それ以前にこういう疑似的な路線バスを運営している段階でちょっとおかしいんじゃないかと思うんですよ。最近よく「脱法ドラッグ」「脱法ハーブ」なんて言い方をしてますけど、この「ツアーバス」だって私から見れば「脱法路線バス」です。同じように運行しているのであれば、ルールを守っている方を優先するのがスジだと思っています。

多分今回の事故を受けて、また規制が始まるのでしょう。その際、ツアーバス側がどのようなやり方ですり抜けようとするのか、注意深く見守っていきます。

最後になりましたが、今回の事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りすると共に、事故に遭われ負傷してしまった方々が一日も早く回復されます事をお祈り申し上げます。

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