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2010年1月 9日 (土)

阪急はイギリス、京阪はアメリカ。

 「阪急はイギリス。そして京阪はアメリカ。」

唐突に結論から始めてみましたが、如何でしょうか。多分これを読んでいる方の大半は「何が根拠にそんな事を言っているのか?」と疑問に感じたことでしょう。今回の更新はちょっとアカデミックに参ります。

 皆さんは鉄道を利用する際「次の特急に乗ろう」「このきっぷは普通と快速列車にしか乗れない」等という表現を聞いたことがあると思います。この「特急」や「普通」といった種別、調べてみると結構日本独特のものだったりします。

ヨーロッパ諸国ではせいぜい使用して「特急」程度。大半は「急行」だそうですが、日本の場合は「列車種別」の考えが各々の鉄道会社に違っていて、まさしく千差万別。

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「急行」よりも停車駅が少ないけれど「特急」程ではない列車に「快速急行」、急行より停車駅が多い「準急」「区間急行」等、まるで「日本語の限界」を探るかのような多種多様の「列車種別」が私鉄のダイヤグラムには設定されています。

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(近鉄奈良線には「区間準急」という種別があります。英訳したら奇妙)

もちろん昨今の国際化の波によって、この種別にも様々な英訳が付けられています。「Limited」「Express」「Rapid Express」「Sub Express」「Semi Express」「local」等々、各会社によってどの種別にどの言葉を使うかも違っています。しかしその中で何故かくっきりと分かれているのが「回送」の英訳表現です。

Rc759 (阪神なんば線桜川駅)

「回送」という種別は、車庫から始発駅等に向かう際お客様が乗車しない列車に用いられます。この「回送」の英訳、実は大まかに見ると2つの表現があります。

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「Out of service」と「Not in service」。この2つはどちらも「回送」を意味するようですが、実はこの言葉が生まれ、使われている国がまったく違うんです。鉄道が生まれた国イギリスで使う「回送」の表現は「Out…」の方で、車大国と呼ばれたアメリカで「回送」として使われているのが「Not…」だったりします。

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(左から阪急・阪神・南海)

関西を代表する五大私鉄の方向幕で確認すると、阪急さんと阪神さん、そして南海さんはイギリス式の「Out…」を使用しています。

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(左から京阪・近鉄特急・近鉄一般型)

一方の京阪さんと近鉄さんはアメリカ式の「Not…」を使用しています。

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(左:近鉄大阪難波駅のパタパタ、右:京阪枚方市駅のパタパタ)

近鉄さんの場合、数多くの鉄道会社と合併を繰り返して現在の路線網を築き上げた歴史があります。つまり「合衆鉄道会社」というバックボーンがあったのでしょう。一方の京阪さんの場合は、阪急さんと戦時中合併し、戦後そこから独立したという背景があるために、「独立精神がある」ということを表現したくてアメリカ式の「Not」を採用した…というのは言い過ぎでしょうか。

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(しかし「ひらパー兄さん」はカナダのバンクーバーに夢中。こういうノリはアメリカっぽい))

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この「Out…」「Not…」以外にも「回送」を表現する言葉は沢山ありまして、例えば阪神なんば線の桜川駅で行先案内に表示される回送の英訳は…

Rc773 「NON-USE」。

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(阪神なんば線桜川駅に乗り入れる近鉄伊勢志摩ライナーの回送)

桜川駅の西側にある近鉄電車の引き上げ線へ向かうために、この駅には多数の回送列車が設定されています。阪神電車の営業区間なんだけれど、実は近鉄電車が多数乗り入れる。つまり「営業とは完全に無関係、赤の他人の列車」が往来するために、こういう表現になったのではないかと考えられます。

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(会社境界駅でよく見かける光景。引き継ぎをしている姿が密談っぽい)

近鉄の引き上げ線がある関係で「Out」という表現を回送列車に用いる阪神さんと、「Not」という表現で回送列車を表現する近鉄さんの乗務員が入れ替わるのは、境界線のある大阪難波駅ではなくこの桜川駅。つまりこの桜川駅は…

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イギリスとアメリカの国境と言っても過言ではありません。

同じ英語という言語ではありますが、海を隔てるとこれだけの表現の差が生まれるというのは実に趣深いところがあります。皆さんの近くに走っている電車の方向幕で回送という表示が出ていたら確認してみては如何しょうか。結構地味に面白いと思いますよ。

 

 

<オマケ>

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ちなみに「回送」以外にも「Out…」や「Not…」の表現を使う場合があります。阪急さんの試運転の車両に提示されていた方向幕は「Out…」でした。

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東海道新幹線で時々見ることが出来る「修学旅行生専用の団体貸し切り列車」の表示は「Out…」を使うのか「Not…」を使うのか注目してみたら…

Rc784 「GROUP」って。

しかし列車の説明部分には「Not…」の表示。直訳するところの「サービスしていません」をそのままあてはめているようです。

Rc780 Rc781

その一方で新大阪駅までの列車には「Out…」。これも「サービス終わりました」と表現しているのでしょうか。いやはや英語は奥が深いです。

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