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2009年3月21日 (土)

ツアーをプランニングしてみる

3月14日のダイヤ改正で東京駅を発着する「富士」「はやぶさ」が廃止、「ムーンライトながら」が季節臨時列車へと降格しました。最終の列車が東京駅を発車する生中継を見ていると、時代の流れとはいえ一抹の寂しさを感じてしまいましたが、その一方で加熱していたのが所謂「葬式鉄」と呼ばれる人たち。そんなに廃止されるのがイヤなら普段から利用すればいいのにと思ったのは私だけでしょうか

さて、その「夜行列車」、昨今はインターネットなどで「夜行列車の運行を存続させよう」なんていう署名活動を始めている人がいらっしゃるようです。中には「線路だけ借りて俺が運行する」といった人もいらっしゃるようです。「線路だけ借りて」なんて事をパッと聞いただけでは「夢物語」だとは思うのですが、実際にやれるかどうかちょっと検証してみましょう。

日本の鉄道事業者には大きく分けて3種類あります。皆さんが鉄道事業者と聞いてすぐ思い浮かべられるような「線路」や「車両」等の設備を所有し、自ら雇った従業員で「運行」するという鉄道事業者を「第一種鉄道事業者」といいます。「線路」を所有せず、「車両」と「運行」だけを担当する鉄道事業者を「第二種鉄道事業者」、その逆に「線路」だけを持つ会社を「第三種鉄道事業者」といいます。

Rc228

(どういう区分なのか写真に当てはめてみました。多少強引なところがあります)

「第二種」の一番分かりやすい例はJR貨物さん。一部貨物線という形で路線を持っている個所がありますが、大半は他のJR各社さんが所有している路線を使って貨物列車を運行しています。一方の「第三種」はJR西日本さん・南海電車さんの関西空港線(りんくうタウン駅から関西空港駅間)、京都市営地下鉄の東西線御陵駅から三条京阪駅間、JR東西線、伊賀鉄道等々一見しただけではどの会社の路線なのかわからないような作りになっています。

私が推測するに「線路を借りて運行する」と仰っていた方はこの鉄道事業者の区分の中で「第二鉄道事業者」の免許を取得し、自ら運行しようとしているのではないかと思います。さぁ、前置きが長くなりました。ここからが本番です。

Rc229(果たして借りることは可能か)

「鉄道の線路を借りる」となると、借りる際に何らかのレンタル料を支払わなくてはいけなくなります。実際にJR貨物さんは走行する際には幾ばくかのお金を旅客鉄道会社さんに支払っているそうです。もちろん新たに営業をしようとする方にもこれを支払って頂くということになりますが、実際いくらのお値段か正直気になるところ。

文献などを調べていますと、東北新幹線が八戸まで延伸した際に開業したIGRいわて銀河鉄道さん。路線自体はもともと旧東北本線でしたので、現在も貨物列車が同じ路線へ乗り入れています。その乗り入れた際の「線路利用料」としてJR貨物さんはIGRいわて銀河鉄道さんに年間約13億7千万円支払っているそうです。ただしそのうちJR貨物さんが正式に支払っている金額は約3億7千万円で、この金額そのものは元々JR東日本さんが東北本線を運営していた時代から変わっていないとのこと。

後々計算しやすいよう今回は「年間4億円支払っている」ということにしまして、JR貨物さんは1キロ当たりどれだけの鉄道使用料を支払っているのか割り出してみました。

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ここ最近は貨物列車の本数が減ったとの報告がありますが、あえて毎日4往復あると計算しますと、貨物列車は年間で2920本。これを4億で割りますと一本当たり14万円の使用料をJR貨物さんはIGRいわて銀河鉄道さんに支払っている計算になります。

Rc231

コレをキロ数で割ってみると計算上は1キロ当たり1670円。もっと高いかなぁと思っていましたが意外と安くなりました。この1キロ当たりの値段を元に「東京~大阪間」の列車を運行したと仮定して算出すると…

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片道で約95万、往復で約190万円というお値段。これだけ見ると「アラ、意外とお買い得」なんてことを感じてしまうのですが、あくまでこれは「最低の価格」であり、実際はこれよりも数倍以上すると思います。さらに運行するにあたって出てくるであろう問題はコレだけではありません。

Munku02 Nagoya21

(現在の駅舎は各鉄道会社の所有物であり、借りる際には駅舎の利用料が発生すると思われる)

第二種鉄道会社は「線路を借りて営業する」ことを前提としています。つまり簡単に言えば「それ以外のモノは自分たちで用意しろよ」ということです。日帰りバスツアーのように観光バスだけ借りて運行するというワケにはいきません。お客様を乗せる車両・運行する従業員・整備する従業員の人件費にプラットホーム、そして運行しない時に車両を留置しておく線路…。初期費用を何となく考えるだけで簡単に数10億円ものお金が飛んで行きます。

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(知られるようにするには大々的なPRも必要)

もちろん初期費用だけではありません。「線路使用料」以外に車両の維持費、走行距離に応じた検収・更新費用、運行を大々的にPRするための広告料…これらの費用が列車を運行する際必ず発生します。そこらあたりどういうお考えなのでしょう。

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仮に一車両に36人(サンダーバード用グリーン車の座席数)、10両編成で運行したとしましょう。そうすると1編成が運べる人数は最高で360人となります。先程の「線路使用料」で割り出すと1人当たり約2600円ですから今のツアーバスよりも格安に提供することが可能でしょう。ただしソレは減価償却などを全く考慮しなければの話で、そんなことを考慮しない会社は世界中探してもありません。

もし第二種鉄道会社を新たに立ち上げ、夜行列車を運行したい!とお考えであれば、アラブの石油商とかウォール街で非難を浴びながらも数10億円のボーナスを得る保険会社の重役をスポンサーに迎えてやったほうがいいのではないでしょうか。少なくとも「線路だけ借してくれれば採算をとることが可能」なんて言葉は虚言と言われても仕方がないでしょう。

鉄道事業は、鉄道ファンが思いつきでやれるほどのレベルではありません。

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