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2006年10月21日 (土)

『高速そば』を求めて

 本日も当『レールウェイコンシェルジュ』を閲覧して頂きまして、誠にありがとうございます…と、いつもの低姿勢なのか威圧的なのかよくわからない文体でお送りしております当『レールウェイコンシェルジュ』。皆様からの閲覧数が間もなく2万に達しようとしています。これもひとえに当サイトを閲覧して頂ける皆様と、ご紹介していただける『デイリーポータルZ』様、『コネタ道場』道場主の石原様のおかげでございます。本当にありがとうございます。

今回はちょっとこの『独特な文体』で書き上げるのではなく、デイリーポータルZ様でご活躍されているライター様をリスペクトするような文体で記載させて頂きます・予めお許しくださいませ。それでは、本題へと参ります。

 

###ここより文体が変わります###

 

 インターネットで色々見ているととても気になる項目を見つけた。神戸高速鉄道の新開地駅の構内には『高速そば』という名前の立ち食い蕎麦屋があるらしい。…とても気になる。今まで『福を探しに』わざわざ福駅に行った事はある。結果は福々しい街並みに突如出てきたユニクロ、文字通り福駅の付近は服(福)だらけだった。この『高速そば』もその匂いがする。高速で出される蕎麦、一度この目で確かめてみたい。私は神戸へと向かうことにした。

…とはいうものの、比較対象物というのは必要だ。普通の立ち食い蕎麦屋というのが一体どれだけのスピードなのか。そこで普通の立ち食い蕎麦屋をリサーチしてみることにした。どうせなら…と思い立ち、阪急電車の十三(じゅうそう)駅で立ち食い蕎麦屋の暖簾をくぐる事にした。

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…多角経営をモットーとする阪急電車らしく、神戸線、宝塚線、京都線の三路線と接続する十三駅には多種多様の店が出店している。551の蓬莱や和菓子屋、阪急阪神ホールディングスの中で地味ながらもハイソな雰囲気を漂わせている宝塚ホテルのホテルグルメなどがズラリと並んでいる。また以外かもしれないが、この十三駅にあるasnasというコンビニが日本で初めて駅構内に設置されたコンビニなんだそうだ。今ではいたるところにある駅中コンビニ、この十三駅が最初だというのはちょっとした驚きだ。

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 そんな驚きを感じつつ、『阪急そば』という立ち食い蕎麦屋に向かった。この蕎麦屋、関西の私鉄では初めて駅構内にできたという店らしい。正面の看板に書かれている老舗の文字がいかにも老舗らしい。メニューもリーズナブルな値段で、お客さんが少ないであろう昼前に訪れたものの、中は人で一杯。すげえぞ『阪急そば』

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その店内で券売機でチケットを買う。そこから品物が出てくるまで何秒掛かるかを計測し比較対象とした。注文するのは最もポピュラーな『天ぷらそば』。かの人間国宝である噺家の桂米朝氏もこの阪急そばがお気に入りらしい。氏の自宅がある阪急沿線へ帰る際、途中下車してまで味わっていたという逸話がある。そんな米朝氏も出てくるまでの時間などは気にしていないだろう。厳正な時間を求める為、ストップウォッチを用いて測定した結果がコレ。

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…約33秒、これは早いのだろうか。この記録を元に私はいよいよ新開地駅へと乗り込む。

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十三駅から約30分、列車は神戸高速鉄道の新開地駅へと辿り着いた。神戸高速鉄道というのは一種独特な形体で運営されている会社で、この会社は電鉄会社でありながら電車を所有していない。阪急、阪神、山陽、神戸電鉄各社が乗り入れることで代用している。しかし現在阪急神戸線の列車のほとんどがこの新開地駅で折り返すという。過去に何があったかは知らない。ただこのホームに佇んでいると一体私はどの会社の駅にいるんだろうかと思ってしまう。一方のホームからは姫路へと向かう阪神電車が走り抜け、一方のホームには阪神梅田行きと書かれた山陽電車がやってきている。

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ただ、今は蕎麦だ。コンコース階へ向かい、早速店舗を探す。神戸らしくシュークリームの出店や時代物の路線図、駅中コンビニも愛でながら『高速そば』を探す。

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…意外とアッサリと発見してしまった。コレだけみると盛り上がりも何も無い。普通のターミナル駅ならばどこにでもありそうな普通の立ち食い蕎麦屋だ。ただ奇異に映るのは暖簾にかかれた『高速』という文字だけ。駅の中という立地条件ゆえにちょっと高めの料金設定が悲しい。

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…でも、この駅が目的だ。早速先ほどの十三駅の阪急そば同様に天ぷらそばを注文してみる。

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美味そうだ。…というか、あまりに美味そうなのでストップウォッチを止めた直後に一口思わず食べてしまった。もちろん美味い。思わず時間の測定を後回しにするほどの美味さだ。海老天も典型的なB級の天ぷら。これがまた嬉しかったりする。阪急そばのかき揚げもいいが、こういう天ぷらが一番立ち食いらしい。食べ終えた後ストップウォッチを確認してみると、

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…阪急そばより7秒遅かった。ガッデム。

ただし、この事は想定の範囲内だ。あのウィキペディアでさえ『別にそばが高速で出てくるわけではない』と書かれている。この高速というのは『神戸高速鉄道』という会社名から取られているだけの話。もし本当に高速で出てくるのであれば、今頃テレビに出まくっているだろう。

…コレだけで終わってはいけない。確かに店名の『高速そば』は堪能した。でも、違う方向性で『高速そば』を楽しむ事は出来ないだろうか。そう思い立った私は、新開地駅から一旦三ノ宮へ出て、ある場所へ向かうことにした。

Pict0095_1(もう何をやるかおわかりですね)

高速状態で動く電車の中で『そば』を食べる。それこそが『高速そば』ではないのだろうか。そうだ、本当の『高速そば』を食べに行こう。思い立ったが吉日、早速材料を調達して、あの場所へ向かうことに。

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…そう、世界中に普及した高速度鉄道の先駆けとなった『新幹線』。その車内で蕎麦を作って食べてしまえば『高速そば』と言ってもいいのではないか。ビジネスマンや修学旅行生がごった返す新幹線のホームに向かい、調理に最適なあの列車を待つことに。

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(左:『高速そば』の仕込みをする私、中:孤独を紛らわせている私、右:新幹線の時刻表)

そうこうしているうちにアナウンスが駅構内に響き渡る。岡山方面のトンネルから光が漏れ、『高速そば』の舞台ともなる新幹線がやってくる…!

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そう、元祖新幹線。車内販売で売られているコッチコチンのアイスクリームでも御馴染み『0系新幹線』だ。 もう山陽新幹線だけで走行しているこの車両、今回の『高速そば』はこの『0系』でなければ成立しないのだ。

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車内はどこか懐かしい雰囲気がある。電話のスペースも年代もののゆったりとした2列シートは廃車されたグリーン車から譲り受けたものなのだろうか。 単にこのゆったりとした座席を楽しみたいが為に乗っているわけではない。本来の目的は違うところにある。そう、本格的に料理が作れるスペースがこの0系には残っているのだ。

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 現代の新幹線には無い『売店』というパブリックスペース。ここが『高速そば』のメインダイニングとなる。きちんと予め言っておくがこの場所は普段車内販売の準備基地として活動しており、炒めたり煮たりする調理は一切行っていない。単に立ち仕事をしやすそうだという理由でここを選んだだけだ。

それではこの場所で本当の『高速そば』を作っていく。

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もちろんお湯もガスも使えないので、コンビニで買ってきた冷やしそばをアウトドア用の丼に移し返す。『高速そば』をリスペクトしつつ、『高速そば』を超える為に、側面には『めっちゃ高速そば』という文字を入れさせていただいた。後は盛り付けるだけだ。

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調理開始。今回はファミリーマートさんの「月見とろろそば」を使わせて頂いております。

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調理中、車内販売の方が通りかかった。きちんと理由を説明して場所を貸してもらう。店仕舞を始めている横で、私は私の夢を叶える。

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調理の間、怪訝そうな顔で車掌さんが通り抜けていく。でも急がねば蕎麦が延びるし新幹線自体が終着駅に到着してしまう。麺が意外と固くなっていたことに四苦八苦すること約2分。

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…出来た。本当の『高速そば』の完成だ。アレだけ急いでいても美味そうだ。ただ、今となってはどうして移し変えるのかが少々疑問だけども、移し変えなければ『高速空間で作り出した』という言い訳が出来ない。早速頂く事にする。新神戸駅から新大阪駅まで約15分。急がねばならない。風景がどんどん大阪になっていく。

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『いい日旅立ち』のメロディが車内へ流れ出した。新大阪駅へ到着する合図だ。その合図と共に『めっちゃ高速そば』は胃袋の中に収まっていった。

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これぞ本当の『高速そば』だ。こんな簡単に『高速そば』が手に入るなんて他の人は夢にも思っていないだろう。時速220キロで食べる蕎麦の味も、駅の構内で食べる蕎麦の味もどちらも忙しい時には最適だ。是非とも新幹線の車内販売に『高速そば』をラインナップにしてほしい。

<おまけ>

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そろそろ仲間が欲しい。自分撮りはもうイヤだ。

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