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2006年9月27日 (水)

駅中ビジネス

 前回のアレ、結構周囲では評判がイマイチでした。まぁ単に駅に行って写真撮って家帰って階段数えただけですので、それはそれで構いません。あの取材のおかげで体重が2キロ落ちたのが好都合でございます(と、軽くポリアンナの様によかった探し)。

 ちょっとした大ネタの後はコネタ集。軽く一息ついていただこうという趣向でお送り致します。例えるならば『冷蔵庫を掃除するかのようなやり方で素材を集め、料理して皆様に提供させて頂く』ということをさせて頂きます。まぁこういうのは本来失礼と言えば失礼なんでしょうが、何分「鉄」という字は「金」を「失う」と書きます。それなりに予算が無ければ苦しいわけでして、たまにはこういうものでご機嫌を伺おうという次第でございます。今回のコネタは、近鉄線との乗換えで有名な鶴橋駅の店舗に関してでございます。

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大阪在住の方以外は理解されないと思いますが、夕方になると扉をバァン(一昔前の環状線の車両は扉が開く時爆発するような音でした)と開けた瞬間、高架下に乱立する焼肉屋から漂ってくる香ばしくも逞しい焼肉のいい匂いがして、帰宅ラッシュ時間帯ともなると空腹感を恐ろしく刺激する…という一種独特な駅であります。この駅の特徴はそれだけではありません。この駅は天王寺側に近鉄電車への乗換え専用の入口が設置されており、乗換えがスムーズに行える構造になっています。

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ですが、この乗換え口が設置されたのは1970年、それ以前は大阪環状線の中でも随一といわれるほどの混雑した駅でした。

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その理由はこの駅の構造。当初は乗換えを全く考慮していなかったためにとても狭く作られていました。ホームへと辿り着く階段は乗換えを主体とした駅としては小さく、改札口も人が大きく行きかう駅からするとあまりにも規模が小さすぎるのではないか?と思えるほどです。

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(JRの中央改札口周辺は「鶴のひろば」。西改札口に行く階段(下段右)はちょっと複雑な構造)

…小さいですねぇ。この規模ですので、朝のラッシュ時間帯ともなると入場規制が度々行われていたそうです。そんな鶴橋駅にも最近流行の駅中ビジネスがどどんと進出しております。

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(代表的駅中ビジネス・左:大阪駅のいかりスーパー、右:新大阪駅の本屋。何故かゴルゴの棚がある。)

従来の「駅中ビジネス」と申しますと、おみやげ物屋さんにコンビニや食料品店、本屋さんなど多種多様なお店がズラリと並んでいるのですが、 ただどうしても場所が高架下であって、尚且つ駅舎の本機能を温存させる事が命題となってしまった鶴橋駅。品川駅や上野駅、新大阪駅のような多種多様なビジネスを展開する事はできません。そこで少数精鋭の考えに出たJRさん、この鶴橋駅にはあの「パートから社長にまで昇進した」という伝説を残しているブックオフさんが入店しております。

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駅舎の「鶴橋駅」という表示が無ければ鶴橋駅なのかブックオフなのかよくわからない状態になっています。ただこのブックオフ、これだけ大きく書いて誤解されそうですけれども、実はこれこそが「鶴橋駅」の狙い。なんとこのブックオフ、

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…駅のコンコースと直結しております。従来の駅舎なら改札口から何らかの通路を挟んで店舗を作ったり、コンコース内とそれ以外の場所を明確に区分して設置する…という発想になるのでしょうが、そこは我らがブックオフ。改札口と直結することで「世界にひとつだけのブックオフ」という新たな目玉を生み出しました。「改札くぐれば即買取」という店舗携帯派大阪人の本質を見事射止めております。

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(左:改札口の横に説明文を掲げている。右:ブックオフ店内から入れるという告知)

ちなみにこのブックオフ、店舗内にはきっぷの自動販売機を設置しておりません。中二階の改札をご利用される場合は事前にきっぷを中央改札口で購入されるか、JスルーカードやICOCAなどを利用されることをお勧めいたします。   

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(店舗内から見た中二階の改札口、意外と便利だけどきっぷは売っていない)

※今回ご紹介しました『BOOKOFFジェイアール鶴橋駅店』さんの詳しい情報はコチラで御覧ください。

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2006年9月20日 (水)

えきのぼうぎょりょく

昨今語られることが多い「バリアフリー」ということば。昨今鉄道会社では『バリアフリー』の流れに沿って駅舎内にスロープやエレベーター、車内には車椅子の方々に対応した設備など次々と設置しております。また乗務員さん、駅員さんの方々の中には手話に対応できる方や介護などの専門知識を学んでおられる方々も多いと聞きます。『利用する全ての方々に喜んで乗って頂きたい』という鉄道会社の思いがそこには込められているワケです。

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(左:JR京橋駅の車椅子対応のエスカレーター、右:京阪淀屋橋駅のエレベーター専用改札口)

ところで、この「バリアフリー」。この中の「バリアー」という言葉には『防壁』という意味があるのを皆さんはご存知でしょうか。そういう意味合いから訳してみると『防壁を無くす』ということになります。駅でバリアーと称される代表と言えば『階段』です。この階段の段差がバリアとなっているという事は、『段差が多い=防御力が高い』…という意味合いと捉えてもいいのではないでしょうか?というわけで、やってみました。

1:調べる。

 今回は大阪を代表する路線のひとつ、「大阪環状線」の駅を調査対象にします。この路線、大阪環状線の中だけで完結する列車だけでなく、奈良・和歌山(関西空港)京都方面に乗り入れる車両が次々と行きかう賑やかな路線だったりします。一日中ホーム佇んでいても飽きる事はありませんが、今回の目的はその路線の駅にある階段。実際に数えることも考えましたが、今回は大阪環状線の駅に降り立っては駅構内の階段の撮影を行い、後にそこから計測する事にしました。…だからまぁデジカメの中には『お前、何撮ってんのよ?』と突っ込まれる画像ばかり。

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皆さんの目には単なる階段の羅列かもしれませんが、私はこの階段の写真が一体どこの駅の階段なのかが手にとるように判ります。今、TVチャンピオンで『駅の階段王選手権』なんて開催されたら多分初代チャンピオンになれる自信があります。ただ、コレを調査(撮影)している間、周囲の目線は冷たいものでしたし、実際にある駅ではそれなりの国家権力の方に職務質問されました(もちろん現在このような発表が出来るということは、きちんと相手様も納得されたという事です)

2:定める。

…写真に撮影した階段を、ただひたすら数えていきます。しかし調べていくと、大阪駅や天王寺駅、京橋駅や鶴橋駅のように一般的な駅舎と他の路線と乗り継ぐことを前提とした駅舎では一般的な駅舎より構造が複雑になっています。ですので、当初決めていた『階段の段数』だけで『えきのぼうぎょりょく』を決定するという事は不公平になってしまいます。そこで『えきのぼうぎょりょく』を算出するちょっとルールを制定してみました。

1:測定する階段は『改札口』から『大阪環状線のホーム』に通じる階段に限定する(大阪駅・天王寺駅など他路線のホーム数が多いと必然的に階段の数が多くなります。大阪環状線のホームとして限定すると平等になるのではないかと)。

2:改札口から一旦階段を共用して再度分かれる場合、共用している部分の階段をもう一度加算する。

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(2の条文を図にするとこうなります。この図の場合だと①+②+③+④+⑤×2という計算式で階段の数を求めることになります。)

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(またこの図の様にひとつの通路に複数の改札口へ向けての階段が設置されている場合の計算式は①+②+③+④+(⑤+⑥)×2となります)

3:改札口が複数あり、複数の通路でそれらと階段が繋がっている場合は、該当する改札口から最も近い階段と特定し、他の階段とは別個に考えます(今回の場合大阪駅や天王寺駅が該当します)。

4:これらの階段の数を合算したものを駅に設置されている全ての階段の設置数で割ります(大阪駅や天王寺駅は3の項目で関わった階段のみを合算する対象とします)。

5:4で求められた数値をホームに設置されている階段数で掛けます。

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(上記の駅の場合、ホームに3箇所出入りする階段が設置されているので、4で求められた数字から3を掛けます)

3:数える。

 まずは駅の階段数を測定します。毎日毎日一駅一駅、ひとつの階段ごとにドラマを見出していくように、どんどん、どんどんと数えていきます(もちろん私が数えましたので、もしかしたら間違いがあるかもしれません)。数える駅を終える度、下がっていく私の視力。数々の犠牲を元に調べ上げた数値をグラフにしてみるとこうなります。

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(ビバEXCEL)

…実に意外な結果になりました。本来大本命であろうと思われていた大阪駅が二番手に、意外なダークホースだった京橋駅がトップに踊り出ています。この数値を駅に設置している総階段数で割り出した平均段数で見ます、これまた意外な展開に。

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なんという事でしょう!全く無印だった大正駅がブッチギリのトップです。また近鉄電車が線路の下を走っている鶴橋駅が2位、大和路線の線路を跨がねばならない構造になっている今宮駅が3位。先ほども大本命と思われていた大阪駅がブービー賞というのも恐ろしい状態になっています。…と言いましてもこれにはワケがあります。この平均段数がトップだった大正駅がある場所、ここは大阪市でも海抜が低い場所にあります。尚且つ駅自体が近くを流れている川の堤防の高さ以上に線路を設置しなければいけないという物理的な問題があり、必然的に大正駅は高い位置線路を通し、低い位置に改札口を造らざるをえない構造になってしまったのです。

 一方の大阪駅。コチラは大正駅とは全く違う状態です。実はこの大阪駅、他の駅舎と比べて中途半端な階段がかなり多いんです。

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(これらはすべて大阪駅の中階段。いたるところに階段がある)

5段から10段程度のいわゆる「中階段」というものが大阪駅の大阪環状線ホームへ到達する道すがらたくさん設置されています。これには大阪環状線のホームの位置が改札口の真上に設置されているために設置されている箇所と、大阪駅周辺の地盤が弱くところどころで地盤沈下が発生し、それを解消するために微妙な段差を付けているようです(多分原因は前者だと思いますが)。

さて、お待たせしました。この平均段数にホームに設置されている階段の個数を掛けてみます。これによって当初の目的だった『えきのぼうぎょりょく』が算出されます。その結果がこちら!

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…京橋駅圧勝であります。2005年度のロッテ対阪神の日本シリーズを見ているかのようなレベルの大差。2位以下を大きく突き放し、ほぼダブルスコアといった感じがします。さすが京橋はええとこだっせ、グランシャトーがおまっせ。で、どうしてこのような結果になったのか、ちょっと分析してみましょう。まずは駅のホームに設置されている階段と、大阪環状線のホームへと至る階段数を数えてみます。

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…大阪駅はターミナル駅ですから、階段の設置数は多くなっています。しかし一方で中階段が多いために平均化した場合数字が低く押さえられる結果になってしまったようです。一方の京橋駅、こちらは駅の構造を見ていただければ一目瞭然。本来計算される事はないハズの学研都市線のホームに至る階段も、今回ルールに沿って検証すると計上せざるを得ない状態となってしまいます。出入り口が3箇所あるということと、そのどれもが階段を使用しないと移動できないという構造になっていること、それらの点を踏まえると、この駅に設置されているほぼ全ての階段がこの計算に関わってしまうことになり、京橋駅の数値が高くなってしまうという結果になりました。恐るべし京橋駅。

まとめ。

…今回『えきのぼうぎょりょく』ということで大阪環状線内の駅に設置されている階段を調査しましたが、ほとんどの駅にエレベーターや車椅子を乗降させる機能を持ったエスカレーターなどがきちんと設置されています。駅のバリアフリーというのはどんどん進んでいるという感じでした…が、まだまだ認知されていないというのが現状です。今駅はどんどん優しくなっています。皆さんも駅を利用する際、こういうバリアフリーが進んでいるという現状を今一度確認してみては如何でしょうか。

 

(今回のオマケ)

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(この写真撮影後に職務質問されました。さて、どの駅でしょう?)

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2006年9月18日 (月)

台風

台風13号が日本にやってきました。

今回の台風は九州各地で多大なる被害をもたらしている様です。特に宮崎県延岡市には台風が遠因となった竜巻が発生し、甚大なる被害が伝えられています。延岡市を走っている日豊本線では、特急車両が風に煽られて脱線してしまうという事故が発生しています。

事故に遭遇してしまった乗客の皆様、そして今回の竜巻・台風によって被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。

当「レールウェイコンシェルジュ」では、このブログを管理している私自身がそれほど頭のいい人間ではございませんので、検証するといったパフォーマンスは行いません。既に国土交通省の事故究明スタッフの方々が到着されておられるようなので、そちらの公式発表を待ちたい…と考えております。予めご了承頂ければ幸いです。

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2006年9月13日 (水)

珍車・419系~等価交換の法則~

 10月21日、北陸本線の敦賀~長浜間、湖西線の永原~近江塩津間の電化方式が交流から直流に変更されるそうです。その工事の為に9月23日・24日列車の運行時間変更などが予定されています。当該区間をご利用される方はご注意ください。とはいえ、これによって敦賀駅に新快速列車が乗り入れるようになり、敦賀から関西方面への通勤通学が便利になるだけでなく、観光に行くなんてことも容易になります。ああ、水ようかんが私を呼んでいる…ダイエットの障害になりそうでちょっと怖いです。

 しかし、某錬金術師ではありませんが、「人は何かの犠牲なしに何も得る事はできない。何かを得るためには同等の代価が必要になる。」…という理を表すかのように、この直流化によって運用範囲が縮小していく列車があります。

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 近郊型列車・419系。元々は世界初の寝台電車として開発された583系という特急用の車両でした(この車両が改造された背景はウィキペディアのこちらをお読み頂ければ幸いです)。「寝台電車」を無理やり改造して作り上げたという事もあってこの車両、近郊型の車両にしては珍しい箇所がたくさんあります。

珍しい箇所その1:無理やり運転席を付けている。

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元々長い編成だった583系を短い編成し直し、新たに運行させるのですから、必然的に運転席が少なくなるという状態に陥ります。それを解消させる為にこの当時量産していた通勤型車両の103系のデザインを流用したものを作り上げ、新たに運転台として設置させています。一方では昔ながらの特急用の運転席であり、一方では通勤型。そして運用は近郊型という実に「急ごしらえ」感バッチリなものになっています。

珍しい箇所その2:無理やり窓も付けている。

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これは御覧になって頂いて一目瞭然。寝台を格納させるため小さくなった窓に無理やり外気を取り入れるための窓が取り付けられています。子供が顔を出さないよう工夫したといえば工夫したのでしょうが、元々特急用だったこの車両は冷暖房完備。この窓は何だか圧迫感だけ与えているような気がします。

珍しい箇所その3:乗降口も無理やり付けている。

元は特急用車両だったので乗降口は一箇所、しかもいわゆる「デッキ」と呼ばれる部分が用意されていました。寝台電車として活躍していた時代は普通の寝台客車とほぼ同じ程度の静かさを実現していたそうなので、登場当時の乗客にはかなり好評だったそうです。しかし今は『近郊型』。特急用車両は原則としてデッキを一つしか作らない方針でしたので、この419系を作る際新たに乗降口を作るという事になりました。しかし増設する事は容易ではありません。この車両を導入するに当たって当時国鉄内で叫ばれていたのが「経費削減」というお言葉。その結果、デッキ部分の扉を温存しそのまま転用、客室内には新たにデッキで使用されていたものと同じタイプの扉を設置する(というか、どう考えても温存していた機材をそのまま転用)という手段を講じています。

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(旧来のデッキ部分にはゴミ箱がそのまま温存されている)

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(客席に無理やり設置された乗降口。デッキ部分と同じ形を用いている)

その結果客室内にこの扉からビュンビュンと風が入り込んでしまうという状態にまでなってしまいました。利用していた知り合いによると、前出の窓よりも風が入ることもしばしばあったそうです。しかもこの扉、扉が開く際に内側に織り込まれるというシステムなので、床の部分が特異的な形状となり、乗降する際に注意が必要となってしまいました。もちろん特急用の車両で使われていた扉なので『ラッシュ時』の対応は一切考えていない様子。当初導入された路線区から徐々に撤退し、今現在では閑散した地域でのみ活動をしている状態です。その結果、珍しい電車を見る機会が地方都市でも無くなってしまって余計に珍しい車両として認識されるようになってしまっています。

珍しい箇所その4:デッドスペースが多すぎる。

この車両は何度も言っていますが『特急用車両』でした。しかもソレは『寝台列車』として使用できるように設計されたものですので、昼間に走行するような列車ではありえないような設備もありました。そのひとつが「サニタリースペース」。

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見てお分かりかと思われますがこの扉に囲まれた場所、両方とも「トイレ」です。元々寝台列車にはトイレを二つ設置していますが、昼間の近郊型にトイレは二つもいりません。そのためひとつの扉には「業務用」と大きく書かれ施錠されています。我々としてはこの業務用という部屋の中がどうなっているかは判りませんが、多分改造された時のまま担っているのではないかと思われます。トイレがあるという事は、洗面所もあります。従来の夜行列車で使用されている際は洗面所がトイレと同じく二つ用意されているのですが、今回取材した車両ではこの部分が綺麗に取り外されていました。

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(綺麗に取り外されている洗面所があった場所)

改造された直後は撤去するのも面倒だと思ったのか、水周りの上に化粧版を配置し隠すだけという実に男前な封鎖を行っていたそうです。もちろんその場所は完全なるデッドスペース。元々は特急用の車両(何度言うんだろうこのフレーズ)でしたので、通常座席のある部分の通路が居住性確保の為狭くなっています。後年この車両では立席スペースの確保を目的として撤去されたのではないかと思われます。

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(写真で見ると広そうに見えるが、それは天井が高いから)

珍しい箇所その5:使用者を無視した改造。

とにかくこの車両を作り上げた時代の国鉄は、とにかく近郊型の車両がすぐに欲しかったのでしょう。予算も少なく、制作期間も短い間で作り上げた結果、車内には本当に「とりあえず」という言葉で表せるようなものばかりが鎮座しております。前出の増設された扉も、室内に段差がある上に寸法が狭いのでラッシュには向かない構造になっていますし、トイレが2つあるというのも全く無駄です。ましてや洗面所を取り外すことなく単に隠しただけとは。この惨状を加藤みどりが見たらどうコメントを付けるでしょうか?。大きく見てもそれだけ珍しい箇所があるワケですから、細かいところだともっとあるんですね。ソレを全て紹介するとなると大変ですので、ひとつだけご紹介しておきます。それは吊り革。

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設置箇所によって丸型と三角型になっています。これは従来の通勤型車両や近郊型車両でも見受けられていますので、何ら不思議ではありません。しかし不思議なのはこの三角型の吊り革がおかれている位置にあります。この吊り革が付けられているパイプの位置、これを通路から見てみましょう…

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座席の真上ですやん。普通こういう吊革というのは座っている人に対して邪魔にならない場所に設置するものなのですけれども、思いっきり真上。何を意図してこういう場所に置いたのかこの車両のリフォーム設計を担当した匠がもしいるのならば三日見晩掛けて問い詰めてみたいものです。

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 閑話休題。

これほど突っ込み所が満載のこの車両も、北陸本線の直流化と次のダイヤ改正と共に同区間に投入される新型車両によって、いよいよ桧舞台からお暇を頂戴する…かもしれない状況になってきました。世界初の偉業だと褒め称えられて誕生し、身勝手な人々に翻弄され続け、そして数奇な運命によって改造された彼ら。本来の目的を解除させられ、特急街道の片隅で地域の足を支え続けてきた彼ら。…果たして幸せだったのでしょうか?

それでも彼らは彼らの仕事を今日も黙々とこなし続けています。彼らが彼らの仲間の元へ旅立つその日まで。

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2006年9月 7日 (木)

段々心惹かれていく

(2006年10月16日・記事を追記しました)

 秋がゆっくりと日本列島に訪れようとしております。ここから暫くは『秋』にちなんだ内容で皆様方にお届けして参ります。まずは秋は秋でも安芸、『広島電鉄』さんのお話を少々…。 ま た ダ ジ ャ レ か ? という声には聞こえないフリをして、早速本題へと参ります。

 以前『誰が為に鐘は鳴る』という項目で広島電鉄さんのお話をさせていただきました。あまりにもマジメな語り口調だったので知り合いからは『お前頭大丈夫か?』等のご心配をお掛けすることになってしまいました。大丈夫です、いろんな事があったけれど私は元気です。(高山みなみの声色で)

 その広島電鉄さん。交通論の著作などには「LRTの先駆者」なんて表現をされていますが、みなさんはこの『LRT』というものは一体何なのかご存知でしょうか?この3文字のお言葉の意味を一般の方々は『段差の少ない車両』であると考えておられる方が多いようです。

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(広島電鉄グリーンムーバ、フラットなのでベビーカーも楽々乗車できる)

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(グリーンムーバーさん導入前に設計された車両には大きな段差が)

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(左:広島電鉄のグリーンムーバーマックスさん、右:岡山電気軌道のモモさん)

確かに、現在皆様方が思われている「LRT」のイメージには、「LRT」の利便性を伝える為に段差が少ない設計を行った次世代型の鉄道車両が使われている以上、そうお考えになるのも無理はありません(この点は鉄道事業者や地方自治体、交通評論家も反省しないといけないと思います。もちろん私も含めての話ですが)。しかし、車両だけで「LRT」になれると思っていてはいけません。海外では路面電車以外の普通の車両を使用しても「LRT」と呼ばれることがあります。そう、実はこのLRTという言葉、本来は「公共交通システム」を示す言葉なのです。ですので安易に「LRT」を「新しい路面電車」と考え、コレさえあれば地域活性するぞ!と計画の目玉みたいに考えてはいけません。単に路面電車を引いただけでは活性化どころか余計に地域が寂れる可能性だってあります。そのためには公共交通機関というものがいかに都市部と住宅地をどのように結びつけ、そして両者が発展をするためには如何にして行動するか…という部分の計画をきちんと明確にする必要性があります。地域だけでなく自治体や警察などの大々的な協力も必要となります。

 …で、この広島電鉄さん。どうして「LRTの先駆者」と呼ばれるようになってしまったのでしょうか。それは広島電鉄宮島線の駅のホームに理由が隠されています。

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(両方とも広島電鉄宮島線・地蔵前駅)

…奇妙な形だと思いませんか?駅のホームが一段高くなっている場所があります。この宮島線を走行している車両は先ほど紹介しました「グリーンムーバー」さんに代表されるような路面電車です。路面電車ですからホームが低くないと乗り込むことは出来ません。

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(左:広島電鉄市内線の電停、右:広島電鉄広電宮島口駅。どちらも低い)

これは何故かと言いますと、元々この宮島線と市内を走っている路線はまったく別の路線だったんです。日本の鉄道は『鉄道事業法』と『軌道法』という2つの法律がありまして、この宮島線は『鉄道事業法』に基づいて設置し、市内を走っているいわゆる路面電車部分は『軌道法』という法律に基づいて設置されています(現在この2つの法律の関係はかなり曖昧になっています。そういう試験が会ったら多分テストに出そうです)。ですので、この宮島線では当初普通の電車が走行していました。市内の電車とは現在の西広島駅で乗換えが生じていましたが、その不便を解消することと、市内電車へ住宅街からの乗客をシフトしようという目的で、1962年ごろから市内の電車がこの宮島線に乗り入れを開始。それが地域住民だけでなく観光客にも好評だったことと、車両の近代化を進めるに当たって規格を統一した方がいいという会社側の方針も相まって、普通の電車は1991年に運行を終了し、現在この宮島線には路面電車タイプの車両ばかりが運行するようになりました。

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(左:一見すると普通の鉄道の様に見える、右:でも車庫にいるのは路面電車)

都市部と住宅街、観光地である宮島への利便性を高めた結果、地域住人や観光客にとって利用しやすくなった広島電鉄。昔は交通のお荷物と呼ばれていたチンチン電車が行った起死回生の方針が、欧米で盛んになってきているLRTの方向性と合致したというのは何となく運命を感じてしまいます。この駅の段差はその頃を思い出させるマイルストーンなのかもしれません。

 

<オマケ>

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広電西広島駅は以前「己斐(こい)」という駅名だった。現在はチンチン電車っぽくないヨーロピアンな雰囲気漂う駅になっている。広告のダジャレがまぁ広島っぽくていいでしょ?

追記:「広電西広島駅」と「己斐(こい)駅」は全く別の駅として営業していたそうです。市内線と呼ばれるチンチン電車の駅が「己斐(こい)駅」で、宮島線の列車が発着していた駅を「広電西広島駅」と呼ばれていて、市内線から宮島線に直通する電車は各々の駅で停車して利用客の乗降をさせていたそうです。

今回の記事の内容に関し、広島電鉄の皆様、関係各位の皆様には多大なるご迷惑をお掛け致しました。ここに謹んでお詫び致します。

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