更新しなくなって早何ヶ月経ったでしょうか。ところがどっこいこうして更新しているという事は、そろそろ何か書きたくなってきた証拠というわけです。皆様お久しぶりでございます。レールウェイコンシェルジュのあすやんさんでございます。
久しぶりの更新とばかりにまだまだ本調子ではありませんが、今回はあえて「デイリー道場」さんへこの項目を投稿してみようと「宣言」しつつ進行してまいります。今回のお題はタイトル通り「おけいはんの心意気」。私が鉄道好きになったのもこの会社のおかげだったのではないでしょうか。本当に素晴らしい会社です。
……と、とりあえず京阪さんを軽く持ち上げておいていよいよ本題です。
私は京阪電車さんの事を当ブログで紹介する際、必ず「本末転倒な心意気」という表現を付け加えています。創意工夫をこれでもか!と織り込む事に必死になった結果、他社が追いつけない領域にたどり着いてしまう事幾許。今回はこの「本末転倒さ」をあえてプレゼンしてみようと思っています。まずはこちらの車両。

はい、京阪電車の車両の中で「変わっている」の代名詞と言われている京阪5000系電車です。5つの扉を配してラッシュ時は乗降をスムーズに行い、それ以外の時間帯ではラッシュ用ドアの間に椅子を降ろして着席定員数を拡大させるという日本でコレだけという機能を備えた素晴らしい車両です。
(銀色に輝くラッシュ用ドア)
このドアの間に椅子を置くという装置のおかげでかなり制作費がかかったということもあってか、必要最低限の本数しか製造されなかった……とされていますが、実情はそうじゃなかったみたいです。
(中之島行きだから座席がガッカリしている)
元々京阪さんの電車は車両限界の都合で車体の長さが18メートルと決められています。その18メートルという間に5000系は5つ扉を配置するという構造故に当時としてはかなりワイルドな設計を施しました。そのワイルドな設計故に

乗車位置があってません。

元々5つドアがあるということで、当初は停車時間の短縮などに大きく貢献していたようです。そりゃ出入り口が沢山あれば降りることも乗る事もたやすいですもんね。でもこの車両が出てきて社会構造が変化してきた事に関しては京阪さんちょっと読み違えちゃいました。
関東の人からすれば関西人は以前から「乗車位置を守らない」と思われているようですが、実は関西人「合理的なものに関してはあっさり取り込む」という性質を持っております。そのため、乗車位置さえ守っておけばすんなりと乗車できるという「合理性」が学習出来た時点でえらい勢いで列を形成するようになりました。
しかし本当にすんなりと乗車や降車をするにはもう一つの工夫が必要となります。それは乗車する列と降車する列がひとつにまとまるという事。降りる人が乗る人の列の真ん中を通って降りるということは実は非効率的なんです。乗降の時間を短くするにはどちらか一方に偏るという事が大事になるわけです。

でもこの5000系の場合、乗車位置が全くてんでバラバラ。当初は駅の停車時間が短くなってよかったのですが、列を形成し始めた時点から乗る人が大混乱しちゃって結局停車時間が長くなってしまったそうです。
その結果、ラッシュ時間帯だけに対応する車両となってしまいました。まさに本末転倒な心意気。
……とまぁ、ここまでなら普通の京阪電車のブログ。私が注目したいのは5000系だけではありません。今回あえて注目したいのは京阪電車さんの中で地味な存在な車両というこの車両です。
(新塗装がにあってないのは気のせいです)
京阪1000系電車です。昭和52年に製造されて間もなく35年が経つというこの電車、当ブログ最初の項目「京阪電車・匠の技」という項目で「狭すぎる優先座席」という紹介で登場したあの車両です。
(この座席です、なんということでしょう)
元々京阪電車さんは「本末転倒な」改造する事が大好きなのですが、実はこの1000系も大規模な改造をしております。当ブログの項目でも紹介しましたが、更新改造する際6000系で使われていた効き目の弱い冷房機器を無理やりくっつけています。
(よく見なくても結構大きい)
これだけで紹介するのか?とお思いの方もおられるでしょう。もちろんここからが本題。この1000系という車両、「本当に製造されたのは昭和52年か?」という疑惑もあったりする車両なのです。

戦前に走っていた旧1000形という車両の足回りだけを流用し、車体だけを新造して「700系」という車両を作りました。折しも高度成長時代、ラッシュに対応する車両にするだけでもよかったのでしょう。しかし、車体を作った10年後に「昇圧計画」が持ち上がりました。この際700系の機器は対応できなかったんですね。それじゃあと考えた京阪さん。
「足回りを新しくしちゃって車体を流用すればコレいけんじゃね?」
……そうして700系の車体を流用し、作られたのがこの1000系なんですね(ま、詳しい説明はウィキペディアさんに任せましょう)。
電車の世界においては「車体の乗せ換え」という作業が時々発生します。車体だけを新造し、足回り(車輪や運行機器等)を再利用することで、車体を改造する費用よりも安上がりにしようという目論見が見え隠れします。とはいえ、電車の部品というのは保守や点検をきっちりしておけば何十年でも走行できます。
通常そういう作業は部品の保守関係が災いしてか一回位で終わるのですが、この1000系は2回やっちゃってるんですね。もちろん書類上は足回りを変えたり車体を変えた時点で「車両を新しく作りました」ということになっていますが、実はどこかで昔の部品が存在しているのかもしれません。匠も驚くリフォームっぷりはまさにおけいはんの「本末転倒な心意気」を感じざるを得ません。
こういう「物を大事にする」という風潮はどこの鉄道会社にもあるのですが、ここまで徹底されると「素晴らしい」としか言いようが無くなります。まだまだネタ……もとい、取り上げたい部分は沢山あるのですが、それは次回以降のお楽しみという事で。